[投稿日]2017/04/27[最終更新日]2020/12/08
新制度の重要ポイントをまとめています。
当記事の内容については、技能実習関係法令や制度運営要領等の読解、外国人技能実習機構への質問等により、正確な内容であるよう、細心の注意を払いながら作成しております。
機構のホームページ上で、制度運営要領や、よくあるご質問(技能実習計画の認定申請関係)等、随時更新のお知らせが掲載されていますので、ご注意ください。最新の情報をいち早く入手し、正しく理解していただきますよう、お願い致します。
法務省の「技能実習法による新しい技能実習制度について」や、厚労省の「技能実習法について」のサイト上でも同様に更新されています。
5.「宿泊施設の適正についての確認書」(参考様式1-17号)について
7.「技能実習生の報酬に関する説明書」(参考様式1-16号)について
監理団体の許可申請
外国の送出機関の推薦状(参考様式2-12)がなくとも、とりあえず機構への申請は可能ですが、2017年10月10日(火)までには必ず提出しなければなりません。
参考(フィリピン関係)
POEAを管轄するフィリピン労働雇用省(DOLE)のサイトです。
DOLE
フィリピン海外雇用庁(POEA)のサイトで、フィリピン送出機関の住所・名称・認可期間等の情報がわかります。
POEA_Status of Recruitment Agencies
POEAのサイトで、フィリピンの送出機関のTechnical Intern Offer (TIO)やJOB ORDERの状況が分かります。
POEA_Available Job orders by Agency
日本のフィリピン大使館労働部(POLO)のサイトです。
POLO_TOKYO
二国間協定
二国間の協力覚書が合意された後、一定期間経過後(約半年~1年後)に認定送出機関リストが日本に提供されますが、そのリスト提供から一定期間経過後(約半年~1年後)は、リストに載っていない送出機関からは技能実習生の受入れができなくなります。この「一定期間」は、国によって異なります。
厚労省HP_ベトナムとの技能実習における協力覚書に合意 (2017年6月6日)
(概要)
ベトナムの送出機関の認定については、ベトナム政府は、認定送出機関リストを日本に2018年4月1日(この場合、協力覚書合意後10ヶ月後)までに提供する。日本は、2018年9月1日以降、当該リストに記載されている認定送出機関以外からの技能実習生のみを受け入れることができる。(リストに記載されていない送出機関からは受入れができない。)
厚労省HP カンボジアとの技能実習における協力覚書に合意(2017年7月11日)
(概要)
カンボジアの送出機関の認定については、カンボジア政府は、認定送出機関リストを日本に2018年2月1日(この場合、協力覚書合意後7ヶ月後)までに提供する。日本は、2018年6月1日以降、当該リストに記載されている認定送出機関以外からの技能実習生のみを受け入れることができる。(リストに記載されていない送出機関からは受入れができない。)
どこの国との取決めでも、二国間協定が締結されて約半年~約1年後に認定送出機関リストが日本に提供され、リストが提供されてから約4ヶ月~約1年後からは、リストに載っている認定送出機関以外からは実習生を受け入れられなくなります。早ければ2018年、遅くとも2019年にはそうなります。
現在の送出機関がリストに掲載されなければ、その後一定期間経過後は、リストに掲載されている他の送出機関から受入れるしかありません。特に日本への送り出しがメインとなっている送出機関にとっては死活問題となるため、それを理解している送出機関であれば、これからより一層適正な事業運営に取り組むのではないでしょうか。
リストの提供・公表は2018年から順次始まります。機構・厚労省・法務省のホームページ等への掲載をお待ちください。
経過措置の適用によって、旧制度の技能実習1号の実習生をぎりぎりまで入国させようとしても、来年の1月31日が限度です。それも、入管に10月31日までに申請する必要があり、かつ、入国予定日が1月31日までとなっていなければなりません。
例1)常勤職員10名の実習実施機関で、2017年2月5日に実習生を3名受け入れている場合、次に入国する実習生は、新制度が適用される実習生となります。次は、どうしても2018年2月5日以後の入国となるからです。
例2)常勤職員15名の実習実施機関で、2017年1月25日に実習生を3名受け入れている場合、次に実習生を受け入れられるのは、早くて2018年1月25日となります。したがって、2017年10月31日までに入管に在留資格認定証明書交付申請を行い、かつ、入国予定日が2018年1月31日までとなっていれば、旧制度の技能実習1号の在留資格をもって入国することができます。ただし、2年目(技能実習2号)からは、新制度が適用となります。
2018年2月1日以後入国予定となっている実習生については、入国が遅くなる可能性があります(特に2~5月頃)。
入国日等による新制度適用の違いを、以下にわかりやすくまとめています。
A.2016年1月31日までに入国した実習生
(ただし、2015年11月1日から2016年1月31日までに入国した者は2017年10月31日までに旧2号の期間更新申請が必要。この条件を満たさなければ、Bと同様になる。)
1 年目 旧1号
2 年目 旧2号
3 年目 旧2号
B.2016年2月1日~2017年1月31日に入国した実習生
(ただし、2016年11月1日~2017年1月31日までに入国した実習生は、2017年10月31日までに旧2号への資格変更申請が必要。これらの実習生については、とりあえず技能検定の合格証明書の写しがなくとも、入管で資格変更申請が受理されます。在留期限までに、できる限り早めに提出することとなります。この条件を満たさなければ、Cと同様になる。)
1 年目 旧1号
2 年目 旧2号
3 年目 新2号
※旧制度の基本方針 II 7 (2) ロ 技能実習2号ヘの円滑な移行を図るため、技能実習生の技能等の修得状況を勘案した上で技能実習1号の期間の4分の3程度を経過する前に受検することは、差し支えない。
C.2017年2月1日~2018年1月31日に入国する(入国した)実習生
(ただし、2017年11月1日~2018年1月31日に入国を希望する実習生については、2017年10月31日までに在留資格認定証明書交付申請が必要、かつその申請時に2018年1月31日までに入国予定としていなければならない。この条件を満たさなければ、Dと同様になる。)
1 年目 旧1号
2 年目 新2号
3 年目 新2号
D.2018年2月1日以後に入国した者
1 年目 新1号
2 年目 新2号
3 年目 新2号
7月10日に、機構のホームページで、実習生が署名する以下の6つの技能実習計画認定申請関連の参考様式の外国語版(インドネシア語・カンボジア語・タイ語・タガログ語・ベトナム語・ミャンマー語・モンゴル語・英語・中国語)が公表されました。
1.技能実習生の履歴書(参考様式第1‐3号)
2.技能実習のための雇用契約書(参考様式第1‐14号)
3.雇用条件書(参考様式第1‐15号)
4.技能実習の期間中の待遇に関する重要事項説明書(参考様式第1‐19号)
5.技能実習生の申告書(参考様式第1‐20号)
6.技能実習の準備に関し本国で支払った費用の明細書(参考様式第1‐21号)
実習生に時間外労働等(時間外労働、休日労働、深夜労働のすべてを含む)を年に一月でも80時間以上行わせていた実績がある場合、今後の受入れは非常に困難となります。新制度では、実習生は一月80時間以上の時間外労働等を行うことが原則不可能となるからです。
(1)時間外労働等の定義
技能実習制度運営要領のいう「時間外労働等」とは、時間外労働や休日労働、深夜労働のすべてのことです。法定休日の労働も含まれます。
例)時間外労働 40時間
休日労働 10時間
時間外労働等の合計時間 50時間となり、40時間ではありません。
時間外労働等(時間外労働や休日労働、深夜労働)については、技能実習の目的が「技能等の修得等」である以上、原則として行われることが想定されていません。したがって、技能実習計画において、時間外労働等を当初から予定した申請がされることは、原則として想定されていません。
つまり、当初の技能実習計画では、時間外労働等が「まったく無い」という内容で、認定申請をしていただく必要があります。ただし、時間外労働等の時間が記載されていなければ、時間外労働等をさせることは一切許されません。認定取消事由に該当してしまいます。
(2)時間外労働等の条件
技能実習計画の認定後の「やむを得ない業務上の事情等」により、時間外労働等を行う必要が有る場合には、以下3つの条件を満たす場合に限り、認められる場合があります。
① 「労働関係法令を遵守して行う」ことはもとより、
② 時間外労働等が「技能等の修得等の活動の一環として行われ」、
③ 実習生に対する技能等の修得等に係る「指導が可能な体制が構築されていること」
①については、労基署に提出した36協定に規定する時間外労働の上限時間が40時間であれば、それを超えることはできませんので、実習生に時間外労働を行わせるとしてもその時間内に収めるということです。特別教育の修了や、免許取得が条件で使用が許される機械の使用等は、その条件を満たさなければ使用できないという点についても、同様です。
②や③についての例は次のとおりです。実習実施者の常勤職員が3人しかおらず、その3人とも外出している、あるいはその3人が時間外労働等を行わず帰宅して実習生だけに時間外労働等を行わせる場合は、②や③の条件を満たしていません。指導する者が不在であると、実習生に指導ができないからです。
ただし、上記の条件すべてを満たしているのであれば、当初想定されていないといっても、時間外労働等を実習生に行わせることは一切許さないということではありません。
月単位で時間外労働等が80時間以上となれば、変更の認定申請が必要となります。しかし、原則として、認定を受けることはできないと考えるべきです。社会通念上、技能実習のために時間外労働等が月80時間も必要であるという説明がつかないからです。
36協定の特別条項の上限時間は、休日労働を含めていませんが、技能実習制度の「時間外労働等」は、休日労働の時間を含みます。特別条項が80時間だから、実習生にも80時間まで時間外労働を行わせてもよい、休日労働時間は特別条項には入っていないから休日にさせればいい、という考えは通用しません。
技能実習計画の認定後の「やむを得ない業務上の事情等」により、上記条件①②③をすべて満たした上で、月単位の時間外労働等を80時間未満(80時間は含まない)行わせることとなったのであれば、変更の届出を行う必要はありません。
年単位で実習計画の時間が、時間外労働等を含め25%以上50%未満になるのであれば、変更の届出が必要です(ただし月単位で80時間未満が限度)。
年単位で50%以上となれば、認定申請が必要、つまり原則として認定は受けられないと考えるべきです。
例)当初認定を受けた技能実習計画の年間実習時間が1920時間の場合、年の時間外労働等の時間が480時間以上960時間未満になる予定であれば、変更の届出が必要。960時間以上であれば、変更の認定申請が必要となります(この場合認定を受けることは困難です)。
5.「宿泊施設の適正についての確認書」(参考様式1-17号)について
実習生のための適切な宿泊施設として、下記の事項が確認できることが必要です。当事項については、「宿泊施設の適正についての確認書」(参考様式1-17号)にて確認することとなります。
下記の事項は、最低限の事項です。どれかひとつぐらい当てはまらなくても何とかなる、ということはありません。ひとつでも当てはまらない場合、認定基準を満たさないことになり、認定を受けることができません。(入国後講習期間中の宿泊施設についても、1人当たり4.5㎡以上必要です。)
②(2階が無い場合)や⑤(就眠時間が異なる者がいない場合)などについては、該当しなければ、無に○をし、特記事項欄に該当なしと記載して下さい。
① 宿泊施設を確保する場所は、爆発物、可燃性ガス等の火災による危険の大きい物を取扱い・貯蔵する場所の付近、高熱・ガス・蒸気・粉じんの発散等衛生上有害な作業場の付近、騒音・振動の著しい場所、雪崩・土砂崩壊のおそれのある場所、湿潤な場所、出水時浸水のおそれのある場所、伝染病患者収容所建物及び病原体によって汚染のおそれの著しいものを取り扱う場所の付近を避ける措置を講じていること
② 2階以上の寝室に寄宿する建物には、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上(収容人数15人未満は1箇所)設ける措置を講じていること
③ 適当かつ十分な消火設備を設置する措置を講じていること
④ 寝室については、床の間・押入を除き、1人当たり※4.5㎡ 以上を確保することとし、個人別の私有物収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓及び採暖の設備を設ける措置を講じていること(※5㎡で大体3畳となります。二段ベッドであれば2人でもよい、ということにはなりません。)
⑤ 就眠時間を異にする2組以上の技能実習生がいる場合は、寝室を別にする措置を講じていること
⑥ 食堂又は炊事場を設ける場合は、照明・換気を十分に行い、食器・炊事用器具を清潔に保管し、ハエその他の昆虫・ネズミ等の害を防ぐための措置を講じていること
⑦ 他に利用し得るトイレ、洗面所、洗濯場、浴場のない場合には、当該施設を設けることとし、施設内を清潔にする措置を講じていること
⑧ 宿泊施設が労働基準法第10章に規定する「事業の附属寄宿舎」に該当する場合は、同章で定められた寄宿舎規則の届出等を行っており、又は速やかに行うこととしていること
④についての機構の回答
(機構ホームページ 2017年7月14日更新のよくあるご質問(技能実習計画の認定申請関係)8-2より抜粋)
質問:
技能実習生の宿泊施設について、「技能実習制度 運用要領」では「寝室については、床の間・押入を除き、1人当たり4.5㎡以上を確保すること」が必要とされているが、旧制度から技能実習生を受け入れて使用している宿泊施設がこの基準を満たしていない場合、どのようにしたら良いでしょうか。
回答:
旧制度から技能実習生を受け入れて使用している宿泊施設については、「技能実習制度 運用要領」において示している寝室の面積以外の宿泊施設の基準を満たしていることを前提に、寝室以外に私有可能なスペースを別途設けている等の取組により、実質的に1人当たり4.5㎡以上の私有スペースが確保されていると認められる場合には、当該宿泊施設を使用している間は、「技能実習生のための適切な宿泊施設を確保している」(法第9条第9号、規則第14条第1号)と認められる余地があります。
具体的には、機構の地方事務所・支所の認定課に事前に御相談いただいた上で、宿泊施設の適正についての確認書(参考様式第1-17号)の特記事項に上記の取組等を記載し、必要に応じて疎明資料を添付していただいた上で申請して頂くことが必要です。
技能実習生のための適切な宿泊施設の確保について
(機構ホームページ 2017年7月14日更新のよくあるご質問(技能実習計画の認定申請関係)8-2より抜粋)
質問:
「実習生のための適切な宿泊施設を確保していること」の基準に適合するようにするためには、賃貸物件の場合、申請の時点で賃貸契約を結んで、実習生が入国する前から家賃を払い続けなければならないのでしょうか。
回答:
技能実習生の入国日以降に宿泊施設が使用できる契約となっていることが確認できれば、「宿泊施設を確保している」といえます。契約の内容によっては、入国前から家賃を払い続けなければならない場合も想定されますが、その場合であっても、技能実習生が実際に入居する前の家賃については、「実費に相当する額」とはいえず、実習生にその負担を求めることはできません。なお、契約の内容が、入国前から家賃を払い続ける必要はない代わりに、他に当該賃貸物件の契約をしようとする者があった場合は、契約が解除されるといったものであるときは、「契約が解除されていた際には、改めて適切な宿泊施設を確保する」旨の誓約をしていれば足ります。(当該内容を網羅した誓約書の提出が必要です。)
(1)家賃(居住費)
〇「自己所有物件」の場合:
①実際に建設・改装等に要した費用、②物件の耐用年数、③入居する実習生の人数等を勘案して合理的であると説明可能な額
注意事項:
①に、土地代を入れることは認められません。
実習生が故障させたエアコンその他の家電の修理代や、風呂場や洗濯機の排水溝を詰まらせたための修理代等に充当させるためとして、事前に全実習生から一律決まった額を徴収するということは認められません。故障しなかった場合にはその徴収額がどうなるのか不明ですし、また、故障させていない実習生から徴収すること自体が認められないためです。
実際に故障した場合は、故障させた張本人から、事後に、修理代を分割払いなどで徴収することについては認められる場合がありますが、ここにその額を記載することはできません。
機構に建設費用・改装費用・耐用年数等の証明を求められる可能性がありますので、実際とは異なる費用などを記載しないよう、ご注意ください。
記載例) ①÷②(耐用年数×12カ月)÷③
必ずしもこの計算方法でやらなければならないという事ではありません。これは、参考様式の注意書きに示された一例です。
〇「借上物件」(賃貸)の場合:
借上げに要する賃料(管理費・共益費等を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等は含まない。以下同じ。)を、入居する実習生の人数で除した額以内の額
注意事項:
実習生が故障させたエアコンその他の家電の修理代や、風呂場や洗濯機の排水溝を詰まらせたための修理代等に充当させるためとして、事前に全実習生から一律決まった額を徴収するということは認められません。故障しなかった場合にはその徴収額がどうなるのか不明ですし、また、故障させていない実習生から徴収すること自体が認められないためです。
実際に故障した場合は、故障させた張本人から、事後に、修理代を分割払いなどで徴収することについては認められる場合がありますが、ここにその額を記載することはできません。
機構に賃貸契約書等、家賃の額の証明を求められる可能性がありますので、実際とは異なる家賃を記載しないよう、ご注意ください。
記載例) 家賃(管理費・共益費込み)÷実習生の人数
もし実費を超える額を徴収しているような場合(例えば、家賃が6万円であるにもかかわらず、実習生が3人しかいないのに2万円を超える額を徴収していたような場合)は、認定を受けることができず、実習生を受入れることはできません。水道光熱費や食費等、その他の徴収額についても同様です。
(2)水道光熱費
徴収費用の明細書や、雇用条件書には、徴収見込額を記載することになる。なお、実習生から徴収する際には、実際に水道光熱費の提供業者に申請者が支払った費用を、水道光熱設備を利用する者(同居している実習生以外の者がいる場合はその人数を含める)の人数で除した額以内の金額を徴収するものでなければなりません。
(3)食費
提供する食事、食材等の具体的な内容が
①「食材、宅配弁当等の現物支給」の場合: 購入に要した額
②「社員食堂での食事提供」の場合: 実習生以外の職員から徴収 する額
③「食事の調理・提供」の場合: 材料費、水道光熱費、人件費等の費用の提供を受ける者(同居している実習生以外の者がいる場合はその人数を含める)の人数で除した額
(4)その他技能実習生が定期に負担する費用
記載例)宿舎のインターネット接続料
実習生(同居している実習生以外の者がいる場合はその人数を含める)の人数で除した額
(1)から(4)までのすべてについて、費用が実費に相当する額その他の適正であることの説明を、計算式等によって、「徴収費用の説明書」(参考様式1-18号)に記入し、機構に提出することになります。
雇用条件書への記入の前に、この件を検討する必要があります。今まで実費がいくらなのか明確にされていなかったため、実費を超える額を徴収している実習実施者があったのではないかと思われます。しかし、これによって、実費を明確にすることが義務となりました。これまでの雇用条件書に記載されていた家賃や水道光熱費等を、少なくしなければならなくなる実習実施者が出てくると思われます。
その他の留意事項として、家賃や水道光熱費等、実習生から徴収する額を変更する場合、その都度変更届を機構に提出する必要があります。
7.「技能実習生の報酬に関する説明書」(参考様式1-16号)について
雇用条件書の作成の前に、適正な報酬額を決定する必要があります。
(注意)
記載例に出てくる「パート職員」についてですが、常勤職員でなければ、比較の対象にできません。
旧制度でも、「報酬が日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること。」という上陸基準省令の規定がありましたが、あまり意味のあるものではありませんでした。その意味合いは、新制度のものとは大きく異なります。
旧制度では、全国的に見ても、実習実施機関が所在する地域別最低賃金や、実習実施機関に適用される特定最低賃金と同額または数円程度高い賃金を支払っているという場合がほとんどであったと思われます。一方、新制度では、賃金が日本人と同等であることについて、比較材料を用いて、説明しなければなりません。
「1号ロの実習生でも、最低賃金ではダメなのか?」という質問が実習実施者からあれば、監理団体としては、逆に、「日本人の新入社員(常勤社員であって、1号ロの実習生と同様の経験年数や技術、責任の方)でも、地域別や特定最低賃金を支払っているのでしょうか?」という質問をするべきであると考えます。報酬額の決定は、ここから始まります。
実習生の報酬額の基準
実習生(フルタイムの有期契約労働者)に対する報酬の額が、実習生と「職務内容や職務に対する責任の程度」や、「実習生が修得等をしようとする技能等に係る経験年数」が同等の日本人が従事する場合と同等以上であること
(注意)実習生と同等の日本人は、フルタイムの常勤社員です。
機構によって示された比較材料の例としては、以下のようなものがあります。
経験年数・業務の範囲・業務量(作業スピード)・技能・業務における責任(工場長の補佐などの役割・新人への指導等)
機構の説明によると、ただ日本人と比べて日本語能力が劣るというだけの理由で賃金を安く設定したりすることは、認められないということです。
ただし、技能実習に最低限必要な日本語能力がなければ、業務範囲、業務量、技能、業務における責任も低くなると思われますので、あえて日本語能力を比較材料にする必要はないと考えます。基本的には、上記下線部の比較材料を用いて、機構の記載例を元に比較説明することをお勧めします。
1.同程度の技能等を有する日本人労働者がいる場合
実習生の任される「職務内容や職務に対する責任」の程度や、実習生が修得等をしようとする技能等に係る経験年数が、当該日本人労働者と同等であることを説明した上で、当該日本人労働者に対する報酬の額と同等以上であることを、説明する必要があります。
具体的には、「技能実習生の職務内容や責任の程度」を、参考様式1-16の1の②に記載する必要があります。
(説明の記載例)
安全管理や衛生管理に関する基礎的な技能(○○、○○)があり、初歩的な作業(○○○、○○○)を行うことができる。技能実習指導員の指導の下で、指示を受ければ業務を行うことができる。
また、「実習生に対する報酬が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であると考える理由」を「技能実習生の報酬に関する説明書(参考様式1-16)」の2の①と④に記載しなければなりません。
(2の①の説明の記載例)
入社1年目の社員Aは、安全管理や衛生管理に関する基礎的な技能(○○、○○)があり、初歩的な作業(○○○、○○○)を行うことができる。技能実習指導員の指導の下で、指示を受ければ業務を行うことができる。
(2の④の説明の記載例)
社員Aは、技能実習生と同様に経験年数は1年であり、任されている業務の範囲や業務量においても、技能実習生と変わらない。また、ともに技能実習指導員の指導の下で、指示を受けて業務を行っており、業務における責任も同程度である。
2.同程度の技能等を有する日本人労働者がいない場合
(1)賃金規程がある場合
同規程に照らした個々の企業の報酬体系の観点から、説明を行う必要があります。
賃金規定を添付しなければなりません。
具体的には、「実習生に対する報酬が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であると考える理由」等を、「技能実習生の報酬に関する説明書(参考様式1-16)」の3の①と➄に記載しなければなりません。
(3の①「最も近い職務を担う日本人労働者の職務内容や責任の程度」の説明の記載例)
入社5年目の社員Bは、5年間の経験の中で、安全管理や衛生管理について高い技能(○○、○○、○○、○○)を有している他、初歩的な作業(○○、○○、○○、○○)から一定の技術が必要な作業(○○、○○、○○、○○)までを行っている。技能実習指導員を補佐する役割を与えられており、新入社員を指導することもある。
(3の⑤「実習生に対する報酬が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であると考える理由」の説明の記載例)
社員Bは、当社賃金規定第○条〇項別表の給料表(その他、等級、号数等)に基づき、勤続7年目の社員としての報酬が決定されている。技能実習生は、同一の賃金規定に基づき、勤続1年目の社員としての報酬が決定されている。
ただし、給料表、等級、号数などが賃金規定(別表等)に記載されていなければ、説明を行うことは困難です。多くの中小企業の賃金規定には、給料表などが記載されていないと思われます。このように賃金規定があったとしても、報酬額を決定するための基準が記載されていないような場合、以下の(2)で検討せざるを得ないものになると思われます。
(2)賃金規程がない場合(または賃金規定があってもそれでは説明ができない場合)
実習生の任される「職務内容や職務に対する責任」の程度や、実習生が修得等をしようとする技能等に係る経験年数が最も近い職務を担う日本人労働者と比べ、どのように異なるかという観点から、説明を行うこととなります。
具体的には、「実習生に対する報酬が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であると考える理由」等を、「技能実習生の報酬に関する説明書(参考様式1-16)」の3の①と➄に記載しなければなりません。
(3の①「最も近い職務を担う日本人労働者の職務内容や責任の程度」の説明の記載例)
入社8年目の社員Cは、8年間の経験の中で、安全管理や衛生管理について高い技能(○○、○○、○○、○○)を有している他、初歩的な作業(○○、○○、○○、○○)から一定の技術が必要な作業(○○、○○、○○、○○)までを行っている。技能実習指導員を補佐する役割を与えられており、新入社員を指導することもある。
(3の⑤「実習生に対する報酬が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であると考える理由」の説明の記載例)
社員Cは、技能実習生と比べて担当する業務の範囲が広い(△△、△△、△△、△△)。その他、同一の時間で約2倍のスピードで正確に業務をこなすことができる。また、技能実習指導員を補佐し、新入社員を指導することもあり、技能実習生と比べて責任の程度も大きい。上記の観点から、技能実習生と社員Cとの報酬の違いは妥当なものであると考える。
※賃金規定について
賃金規定とは、就業規則の一部の、賃金の決定および計算方法、賃金の支払方法、賃金の締め切り、昇給に関する事項等に関する規定です。下線部は、絶対的必要記載事項です。就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合は作成し、労基署へ届け出る必要があります。
実習生を継続して受け入れる場合について
2号及び3号の賃金が前段階の技能実習よりも上回るなど、技能等の習熟度に応じた賃金の格付けを行う等、実習生が技能等の修得等をしようとする意欲の向上に資するようにすることが必要となります。つまり、1号よりも2号、2号よりも3号の賃金が上回るようにする必要があります。申請する実習生だけでなく、他の区分の実習生も受け入れている場合、他の区分の実習生との賃金の差も検討する必要があります。
また、例えば、実習生が2号に移行するための申請であった場合、1号のときよりも高く設定するのはもちろんのこと、同じ区分の実習生以外(2号だけでなく1号の実習生もいるような場合)を同時に受け入れている(受入れる)場合についても、1号よりも2号、2号よりも3号の実習生の賃金が上回るように設定する必要があります。つまり、1号だけでなく2号の実習生も受け入れている場合、2号の実習生は、少なくとも、地域別・特定最低賃金では認定基準を満たさないことになります。以下の例を参考にして下さい。
例)ある個人農家では、日本人でもほぼ未経験の新人であれば、最低賃金で雇用しているという実態がある。したがって、新たに入国予定の1号の実習生Aの賃金は、最低賃金に設定して申請することにした。この農家には、1号の実習生Aが入国するのと同時に2号になる実習生Bもおり、その申請でも、最低賃金に設定して申請することにした。Bの入国時(1号)は、最低賃金であったが、1号期間中の最低賃金改正により、最低賃金が10円上がっている。したがって、1号よりも2号の方が賃金が上回るという条件は満たしている。ただし、このままではAとBの賃金が同じになってしまう。これでAもBも両方認定を受けることができるか?
回答:Aは認定されると思われるが、Bは基本的には認定されない。その理由は、Aは1号だが、Bは2号であるにもかかわらず、Bの賃金がAの賃金よりも高く設定されていないため。
このように、申請する実習生の他にも、他の区分の実習生を受入れている場合、1号の実習生よりも2号の実習生、2号の実習生よりも3号の実習生の賃金が高くなければ認定基準を満たさないこととなります。他の区分の実習生が受入れられている場合は、申請する実習生が1号の時よりも高くなっているという事を考慮するだけでいいというものではありません。
ただし、実習実施者において、日本人労働者の場合でも、昇給が2年(3年実習の場合)または4年(5年実習の場合)は絶対に無い実習実施者の場合は、1号と2号の報酬額に差をつけずとも、認定を受けられると思われます。
〇 報酬
「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、一般的に通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く。)は含まれません。機構に確認したところ、ボーナスや皆勤手当は含まれるということです。
日本人社員の報酬が企業によって異なることと同様、実習実施者によって、実習生の報酬額が異なることになります。地域別・産業別でほぼ定額という旧制度とは、大きく変わります。
新制度では、各監理団体の「団体監理型技能実習の取扱職種の範囲等」(参考様式2-16号)に記載してある職種・作業以外は、技能実習生の受入れができません。
新制度では、これまで監理団体が受入れた実績がある技能実習生の職種・作業を除いて、受入れができません。たとえ監理団体の定款に職種・作業を追加しても、ただそれだけではできません。
これまで受入実績が無い、新たな職種・作業で技能実習生を受入れたい場合は、監理団体は、以下のどちらかの条件を満たす、技能実習生に修得等をさせようとする技能等について一定の経験又は知識を有する役員または職員を、確保する必要があります。
ただし、申請の時だけ一時的に雇う(または実際には雇わないが、雇っているかのごとく見せかけ、名義だけ借りる)というような悪質なやり方では認められず、最悪の場合、偽変造書類の作成・行使で改善指導などを受ける可能性があります。今までのでたらめな制度とは異なります。安易に考えないよう、ご注意ください。
(参考)訪問指導を担当する者について(制度運営要領164~165ページ)
・ 訪問指導は、技能実習の初期段階である第1号技能実習を行わせるに当たって、監理団体が作成の指導を行った技能実習計画に基づいて技能実習を適正に行わせているかを確認するものであるため、実習実施者に対して適切な指導を行うことができるように、技能実習計画の作成の指導を担当した者が実施するのが望ましいと考えられます。
・また、実習監理を行う実習実施者の数や所在地などの関係から、技能実習計画の作成指導者のみで全ての訪問指導に対応することが困難な場合には、他の役職員がその技能実習計画作成指導者(現に在籍する者)から事前に必要な説明を受けるなどした上で、訪問指導を実施することが望ましいと考えられます。
1.取扱職種について5年以上の実務経験を有する者
職種と作業の両方を満たしていなくても、職種単位で一致する経験であれば構いません。その条件を満たす方が技能実習計画の作成指導者となる必要があります。
2.取扱職種に係る技能実習計画の指導歴を有する者
認定された技能実習計画(新たな職種・作業)の作成指導経験(旧制度の場合、技能実習計画を作成し、それに係る実習生の在留資格認定証明書が交付された経験)があることが必要です。条件を満たす人(例えば他の監理団体で作成指導経験がある人)を、雇う必要があります。その方が技能実習計画の作成指導者となる必要があります。
実習生が危険又は有害な業務に従事することが予定されている場合に、法令で義務付けられている技能講習、特別教育等を受講する必要がある場合があります。
これについては、特に必要と認められる場合を除き、入国後講習終了後に各実習実施者における技能等修得活動中に受講させるものであることとされています。
■実習実施者の認定取消事由の報告
実習認定の取消事由(法第16条第1項各号)に該当するに至った場合は、実習実施者は監理団体に、当該事実を報告しなければなりません。
報告を受けた監理団体は、臨時監査を行うこと等により、その事実を確認し、機構に報告しなければなりません。そもそも国の機関に「法令を知らなかった」という理由は通じませんが、少なくとも当組合からは、実習実施者との契約時に「認定取消事由・罰則チェックリスト」をお渡しし、チェックならびに署名をいただくこととなっております。これによって、認定取消事由を知らないということにはなりません。それにもかかわらず、報告を怠り、機構に発覚することとなれば、悪質性があると判断されることは免れません。悪質であれば、認定取消の可能性が大きくなってしまいます。それを極力避けるためにも、まずは実習実施者から監理団体に報告をし、監理団体から機構に報告をし、早期改善を図ることが肝要です。機構へ早期報告があれば、悪質であるととられる可能性が大幅に減少します。
■監理団体の許可取消し事由の報告
許可の取消事由(法第37条第1項各号)に該当するに至った場合は、監理団体は機構の地方事務所・支所の指導課に、当該事実を報告しなければなりません。
■機構の実地検査等
機構において、実習実施者や監理団体等に対し、報告や帳簿書類の提示を求めることや、質問すること、設備や帳簿書類等を実地に検査することが認められています。
機構の実地検査等で虚偽の回答をすると、認定取消事由となります。また、調査に協力しない場合、技能実習計画が認定されません。
■機構の定期的な実地検査の頻度
監理団体 1年に1回程度
実習実施者 3年に1回程度
この頻度は、「最低でもこれぐらいはある」という一応の目安であり、実習生の通報があって実地検査が必要と判断されたときや、申請に疑義があった場合に実地検査が必要と判断されたとき等には、随時実施されるものと思われます。したがって、実習実施者であれば、「3年に1度の検査のときだけ準備していればいい」というような甘い考えを持つことは避けていただく必要があります。
実地検査には積極的に協力し、技能実習の内容が適正に行われていることを(堂々と)明らかにすることが求められます。
■監理団体への指導監督
法務大臣と厚生労働大臣には、監理団体の許可に関する業務について、実習実施者や監理団体等に対し、報告の徴収、帳簿書類の提出若しくは提示の命令、出頭の命令、質問又は立入検査を行う権限が認められています。
監理団体が「技能実習法、出入国又は労働に関する法令等に違反していることが判明したとき」であって、「監理事業の適正な運用を確保するために必要があると認めるとき」は、主務大臣が改善命令を行う場合があります。
一度許可を受けた監理団体であっても、「許可基準を満たさなくなった場合」、「欠格事由に該当することとなった場合」、「許可条件に違反した場合」、「改善命令に違反した場合」、「入管法令や労働関係法令に違反した場合」等には、許可の取消しの対象となります。
許可の取消事由(欠格事由を除く。)に該当することとなった場合においても、主務大臣は、違反の内容等を考慮した上で、許可の取消しではなく、期間を定めて監理事業の全部又は一部の停止を命ずることがあります。
監理事業所が複数ある場合、その内の1つの事業所だけが事業停止命令を受ける可能性もあると思われます。監理責任者の責任は重大です。
「違法行為の様態や悪質性」などを踏まえて、主務大臣においてどの権限行使を行うか判断がなされます。
■実習実施者に対する指導監督
実習実施者が「認定計画に従って技能実習を行わせていない」ことが判明したときや、
「技能実習法、出入国又は労働に関する法令等に違反していることが判明したとき」であって、「技能実習の適正な実施を確保するために必要があると認めるとき」は、主務大臣が改善命令を行う場合があります。
一度認定された技能実習計画であっても、「認定計画に従って技能実習を実施していない場合」、「認定基準を満たさなくなった場合」、「実習実施者が欠格事由に該当することとなった場合」、「主務大臣が行う立入検査を拒んだり妨害等した場合」、
「改善命令に違反した場合」、「入管法令や労働関係法令に違反した場合」等には、認定の取消しの対象となります。
この場合、まずは実習実施者から監理団体へ報告することとなります。その後、監理団体から機構へ報告することとなります。報告を怠れば、悪質性があると判断されることは免れません。それを極力避けるためにも、まずは報告をし、早期改善を図ることが肝要です。
「違法行為の様態や悪質性」などを踏まえて、主務大臣においてどの権限行使を行うか判断がなされます。(実習実施者に対する指導監督には、事業停止命令がありません。)