育成就労者の『資格外活動』リスク!転売・SNS不法就労の境界線と企業の責任

はじめに:育成就労者の『資格外活動』が企業にもたらす重大なリスクとは?

2026年8月26日現在、新しい外国人材受入れの枠組みとして注目される「育成就労制度」の本格施行に向けて、準備が着々と進められています。この制度は、開発途上地域への技能移転を通じた国際貢献を主眼として運用されてきた技能実習制度が、昨今の人材確保・キャリア育成のニーズの高まりを受け、発展的に見直される形で生まれました。

初めて外国人育成就労者を受け入れる中小企業の経営者の皆様にとって、制度の詳細はもちろんのこと、特に注意すべき点が「資格外活動」です。育成就労者が許可されていない活動を行った場合、それは単なる個人の問題に留まらず、受入れ企業にも「不法就労助長罪」という形で重大な法的責任が問われる可能性があります。

「まさかうちの従業員が…」「知らなかった」では済まされないのが、外国人雇用における法令順守の厳しさです。本記事では、外国人雇用に精通した行政書士が、育成就労者の資格外活動が不法就労となる具体的な境界線、特に転売(せどり)、動画配信、SNS活動といったデジタル時代の新しい働き方に潜むリスクを詳細に解説します。そして、企業がこれらのリスクを未然に防ぎ、健全な育成就労環境を構築するための具体的な対策についてもご紹介します。貴社の安定した事業運営と、育成就労者の適切な育成のために、ぜひ最後までお読みください。

💡 ポイント:

  • 育成就労制度は、技能実習制度から発展的に見直された新しい外国人材受入れ制度です。
  • 育成就労者の「資格外活動」は、不法就労助長罪として企業にも法的責任が及びます。
  • デジタル時代の転売、動画配信、SNS活動などが、意図せず資格外活動となるリスクがあります。

育成就労制度とは?改正法のポイントと資格外活動の基本

育成就労制度は、2024年6月に改正出入国管理法・技能実習法が成立し、公布から3年以内(2027年まで)の本格施行に向けて準備が進められています。これは、従来の技能実習制度が抱えていた課題を解決し、外国人材の育成とキャリアアップをより促進することを目指したものです。

育成就労制度の概要と目的

育成就労制度は、外国人材が日本で働きながら技能を習得し、特定技能制度への移行も視野に入れたキャリアパスを構築することを目的としています。これにより、外国人材は日本での長期的なキャリア形成が可能となり、受入れ企業にとっては、より意欲の高い人材を継続的に確保できるメリットが期待されています。

しかし、この制度も、外国人材が日本で活動できる範囲は「在留資格」によって厳しく定められています。在留資格は、日本で行うことができる活動内容を限定するものであり、その範囲を超えた活動を行うことは原則として認められていません。

在留資格と『資格外活動』の原則

育成就労者として日本に滞在する外国人材は、与えられた在留資格の範囲内で活動することが義務付けられています。例えば、「育成就労」という在留資格は、特定の企業で、特定の職種に従事することを許可するものです。

この許可された活動以外の「収入を伴う事業を運営する活動」や「報酬を受ける活動」を行う場合、原則として「資格外活動許可」を事前に取得する必要があります。この許可を得ずに、本来の在留資格で認められていない活動を行い、報酬を得ることは「不法就労」とみなされ、本人だけでなく、その活動を知りながら放置したり、助長したりした企業にも罰則が適用されることになります。

⚠️ 注意点:

  • 在留資格は、日本で行える活動内容を限定するものです。
  • 許可された活動以外の報酬を伴う活動は、原則として「資格外活動許可」が必要です。
  • 許可なく行った活動は「不法就労」となり、本人だけでなく企業も罰則の対象となります。

『資格外活動』とは何か?不法就労となる境界線

では、具体的にどのような活動が「資格外活動」と見なされ、不法就労となるのでしょうか。特にデジタル化が進む現代において、個人が手軽に始められる活動の中にも、知らず知らずのうちに不法就労に該当するリスクが潜んでいます。

転売(せどり)活動と資格外活動

近年、インターネットを介した商品の転売(いわゆる「せどり」)は、手軽な副業として人気を集めています。しかし、育成就労者がこうした転売活動を行い、継続的に利益を得ている場合、それは「資格外活動」に該当する可能性が極めて高いです。

  • 営利目的の反復継続性: 一度や二度の不用品販売であれば問題となりにくいですが、商品を仕入れて販売し、継続的に利益を得ている場合は、事業性と判断されます。
  • 事業規模: 販売量や利益額が一定の規模に達すると、たとえ本人が「趣味の延長」と考えていても、入管当局からは「事業活動」と見なされるリスクが高まります。

育成就労の在留資格では、原則として許可された職種以外の営利活動は認められていません。転売活動は通常、この許可の対象外となるため、無許可で行えば不法就労となります。

動画配信・SNS活動と資格外活動

YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォーム、InstagramなどのSNSを通じて情報を発信し、広告収入や投げ銭、アフィリエイト報酬を得る活動も、育成就労者にとっては資格外活動のリスクがあります。

  • 収益化の有無: 個人の趣味の範囲で動画を投稿したり、SNSで交流したりするだけであれば問題ありません。しかし、チャンネル登録者数やフォロワー数が増え、広告収益、投げ銭、企業案件などによって継続的な収入を得ている場合は、事業活動と見なされます。
  • 活動内容: 自身の労働力やスキルを提供して報酬を得ていると判断される場合も、資格外活動に該当します。例えば、特定の企業の宣伝を依頼され、報酬を得るケースなどが挙げられます。

これらの活動で収入を得るためには、原則として「資格外活動許可」が必要ですが、育成就労の在留資格でこのような広範な活動に対する許可を得るのは非常に困難です。

その他、注意すべき活動例

上記以外にも、以下のような活動が資格外活動として問題となることがあります。

  • デリバリーサービス: フードデリバリーなどのアルバイトを、本業の育成就労とは別に無許可で行う場合。
  • 副業アルバイト: 育成就労先の会社とは全く関係のない場所で、無許可でアルバイトをする場合。
  • 個人事業主としての活動: Webデザイン、翻訳、プログラミングなどのスキルを活かし、個人で請け負って報酬を得る場合。

これらの活動も、報酬が発生し、継続性や事業性があると判断されれば、資格外活動に該当し、不法就労と見なされる可能性があります。

企業が負う責任:知らなかったでは済まされないリスク

育成就労者が資格外活動を行い、それが不法就労と判断された場合、本人だけでなく、受入れ企業にもその責任が問われます。これは「不法就労助長罪」として、出入国管理及び難民認定法(入管法)に明確に定められています。

不法就労助長罪とは?

不法就労助長罪とは、不法就労者であることを知りながら、その者を雇用したり、就労をあっせんしたり、自己の事業のために就労させたりする行為を罰するものです。ここで重要なのは、「知らなかった」という言い訳が通用しない場合があることです。

入管法第73条の2では、「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」や「不法就労活動をさせるために自己の支配下にある者を提供した者」に対して、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されると規定されています。さらに、「相当の注意を怠ったことにより、その外国人が不法就労活動者であることを知ることができなかった場合」も罰則の対象となる可能性があります。これは、企業に外国人材の在留状況や活動内容を適切に管理・確認する義務があることを示しています。

企業が直面する具体的なリスク

育成就労者の資格外活動が発覚した場合、企業は以下のような具体的なリスクに直面します。

⚠️ 注意点: 企業が負う責任とリスク

  • 法的責任と罰則: 不法就労助長罪に問われ、懲役や罰金などの刑事罰が科される可能性があります。
  • 企業イメージの失墜: 不法就労問題は、企業の社会的な信用やブランドイメージを著しく損ないます。
  • 行政処分: 外国人労働者の受入れ事業に対する停止命令や、今後の外国人受入れが困難になるなどの行政処分を受ける可能性があります。
  • 事業の混乱: 該当する育成就労者が退去強制の対象となれば、突然の人材不足に陥り、事業運営に大きな支障をきたします。
  • 損害賠償請求: 場合によっては、育成就労者本人やその関係者から損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。

これらのリスクを回避するためには、企業が主体的に育成就労者の在留状況や活動内容に目を配り、適切な指導と管理を行うことが不可欠です。

育成就労者の資格外活動を防ぐための具体的な対策

育成就労者の資格外活動によるリスクを未然に防ぐためには、企業が積極的かつ体系的な対策を講じることが重要です。外国人雇用に精通した行政書士が推奨する具体的な対策は以下の通りです。

1. 採用時・入国前の事前説明と同意の徹底

育成就労者が日本に入国する前、あるいは採用が決定した段階で、在留資格のルール、資格外活動の禁止、不法就労のリスクについて、書面と口頭の両方で丁寧かつ明確に説明することが極めて重要です。

  • 就労規則・雇用契約書への明記: 資格外活動の禁止条項を具体的に盛り込み、違反した場合の措置についても明確に記載します。
  • 母国語での説明: 育成就労者が母国語で内容を完全に理解できるよう、通訳を介したり、翻訳された資料を用意したりするなどの配慮が必要です。
  • 誓約書の取得: 資格外活動を行わない旨の誓約書にサインを求めることで、本人の意識付けと企業の管理体制を強化します。

2. 定期的な状況確認とヒアリング

入国後も、育成就労者の生活状況や活動内容について、定期的に確認する機会を設けることが大切です。これにより、潜在的なリスクを早期に発見しやすくなります。

  • 定期面談の実施: 月に一度など、定期的に面談を行い、仕事の状況だけでなく、プライベートな悩みや困りごとがないかを確認します。その際に、副業やSNS活動についてもさりげなくヒアリングすることも有効です。
  • 生活状況の把握: 住居の様子や、休日の過ごし方など、可能な範囲で生活状況を把握し、不審な点がないか注意を払います。
  • 情報収集: 育成就労者同士のコミュニティなどから、不法就労に関する情報がないか、注意深く情報を収集することも有効です。

3. 相談窓口の設置と心理的安全性確保

育成就労者が困ったことや疑問に思ったことを気軽に相談できる窓口を設置し、心理的安全性を確保することが、無許可の活動に走ることを防ぐ上で重要です。

  • 信頼できる担当者の配置: 育成就労者が相談しやすい、信頼できる担当者(日本語能力や異文化理解のある者)を配置します。
  • 匿名相談の選択肢: 必要に応じて匿名で相談できる制度を導入し、本人が安心して情報を提供できる環境を整えます。
  • 母国語対応: 相談窓口が母国語で対応できる体制を整えることで、コミュニケーションの障壁を低減します。

4. 監理団体・行政書士との連携強化

育成就労制度では、監理団体(または特定技能制度の登録支援機関)や行政書士といった専門家との連携が不可欠です。彼らの知見を活用し、適切な管理体制を構築しましょう。

  • 定期的な情報共有: 監理団体や行政書士と定期的に情報共有を行い、制度改正や新たなリスクに関する最新情報を入手します。
  • 専門家への相談: 疑問点や懸念事項が生じた場合は、速やかに専門家に相談し、適切なアドバイスを求めます。
  • 研修の活用: 監理団体が提供する研修やセミナーに積極的に参加し、企業側の知識と意識を高めます。

5. 再発防止とトラブル発生時の対応

万が一、資格外活動が発覚した場合でも、冷静かつ迅速に対応し、再発防止策を講じることが重要です。

  • 事実確認と指導: 事実関係を正確に確認し、本人に対して資格外活動の危険性と法的責任を厳しく指導します。
  • 入管への報告: 不法就労に該当すると判断される場合は、速やかに入管当局に報告し、指示に従います。
  • 再発防止策の検討: なぜ資格外活動に至ったのか原因を究明し、再発防止のための具体的な対策(例:生活費の相談、コミュニケーション強化など)を検討・実行します。

まとめ:健全な育成就労環境のために、企業が果たすべき役割

2026年8月26日現在、本格施行に向けて準備が進む育成就労制度は、外国人材の育成と日本の産業を支える重要な柱となることが期待されています。しかし、その運用には、受入れ企業側の深い理解と、厳格な法令順守が求められます。

特に、デジタル化が進む現代において、育成就労者の「資格外活動」は、意図せず不法就労に繋がり、企業に「不法就労助長罪」という重大なリスクをもたらす可能性があります。転売、動画配信、SNS活動といった一見無害に見える行為も、報酬を伴えば資格外活動と見なされる境界線があることを、企業は常に意識しなければなりません。

本記事でご紹介したように、採用時の徹底した説明、定期的な状況確認、相談窓口の設置、そして専門家との連携は、これらのリスクを未然に防ぎ、育成就労者が安心して日本で働き、成長できる環境を構築するために不可欠です。外国人材を単なる労働力としてではなく、共に未来を築くパートナーとして尊重し、適切な管理と支援を行うことが、企業の持続的な発展にも繋がります。

外国人雇用に関するご不明な点やご不安な点がございましたら、いつでも専門家である行政書士にご相談ください。貴社の健全な事業運営と、育成就労者の適切な育成を全力でサポートいたします。