フィリピン人実習生の扶養控除について
所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)により、平成28年1月分給与から、国外居住親族に係る扶養控除の適用を受けるためには、その親族の「親族関係書類」や「送金関係書類」を給与等の支払者に提出または提示することが義務化されました。
平成28年1月からは、フィリピン人実習生が扶養控除を受けるためには以下の書類が必要となります。
※フィリピン人実習生に対しては、年間の収入が1,500ドルを超えるため日比租税条約による免税の恩恵は与えられません。
1.親族関係書類
フィリピンのバランガイ組織(BARANGAY)が発行する、扶養親族のバランガイ証明書(BARANGAY CLEARANCE)※1 などです。親族関係書類については、出生証明書(Birth Certificate)などが該当しますが、バランガイ証明書が最も入手しやすいものです。
「親族」とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。実習生の配偶者、祖父母、父母、兄弟などが親族に該当します。その中でも「扶養親族」となる人は、日本人同様16歳以上の親族です。必ずしも扶養親族全員の住所が同じでなければならないわけではありません。
また、実習生が来日前に同棲していた恋人は結婚を予定していても扶養親族に該当しませんし、実習生の妹が結婚して名字が変わった場合は、妹であることを証明するために婚姻証明書など追加書類が必要となる可能性があります。
※1 バランガイ証明書が親族関係書類に該当することについては、国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)の注意書きに明記されております。
2.送金関係書類
実習生は、メトロバンク(口座間の送金)やWestern Union(Western Unionの日本の支店からフィリピンの支店等に送金し、その支店等で親族が受け取る)などの金融機関を通じて親族に送金していますが、送金時の送金依頼書や領収書なども送金関係書類となります。
送金関係書類に必要な項目は以下のとおりです(ただし、他の項目は全て網羅されているものの送金の目的のみ記載されていないような場合、それだけで送金関係書類とみなされないわけではありません。判断は企業に委ねられます)。
①送金者の氏名(実習生本人)
②送金受領者の氏名(実習生の扶養親族)
③送金日
④送金額
➄目的(生活費または教育費など)
以上、全てが確認できるものが必要です。
現状ではほとんどの実習生が一つの口座(メトロバンクなどの場合)または一人の受取人宛(Western Unionの場合)にまとめて送金していますが、このままでは扶養人数は1名となってしまいます。扶養人数を2名にするためには、もう1名の扶養親族にも送金しなければなりません。また、親族関係書類の氏名と送金関係書類の受領者氏名が一致している必要があります。
※ 送金額については、いくら以上でなければならない、という決まりはありませんが、生活費や教育費の送金を必要の都度、行ったことが明らかである金額であることが必要となりますので、年間の送金額が生活費や教育費に充てるにしては少額ととられないよう注意する必要があります。
なお、個人住民税に対する国外居住親族に係る扶養控除については、平成29年度から適用されます。扶養控除の適用が厳格化されましたので、平成29年からはたいていのフィリピン人実習生は個人住民税を支払わなければならなくなります。
※ 平成28年分の所得に係る個人住民税は平成29年に支払うことになります。